小説版『バタリアン』怒涛の小ネタ20連発!【vol.1】

幻の稀覯本『映画小説バタリアン』

ついに…ついに入手できました!

知る人ぞ知る小説版バタリアン、
『映画小説 バタリアン』です!

帯の状態も良好。もちろん初版。
というかむしろ二刷って存在するのでしょうか…?
情報お持ちの方いましたらコメントで教えてください。

謳い文句は「読むと見える 講談社X文庫」
最高です。

こちらは裏面。
見てくださいこの香ばしいラインナップ。

こちらの『映画小説バタリアン』は現在市場在庫が超僅少のため、価格はプレ値になってしまっていて入手が非常に困難な本でもあります。店主は三年探してようやく手に入れられました(ちなみに2420円で買えました。奇跡です)。

読んでみると映画版とは細かな点が異なっていたり、小説ならではの心理描写や意外な設定が明らかになって大変興味深い内容でした。

入手しづらい本ということもあり、読みたけいけど読めない、という方に雰囲気だけでもお伝えできればと思います。

映画版との意外な違いや本当にどうでも良いマニアックなことまでくわしく紹介していきますのでバタリアン好きな方はぜひ最後まで読んでください!

※なお、この記事にはネタバレを含みますのでご注意ください。

書いているうちにたいへんなボリュームになってしまったため、本記事はvol.1とvol.2の二本立てでお送りいします。ぜひ続きもお読みください。

小説版『バタリアン』について

『映画小説バタリアン』は、講談社から1984年に創刊された「X文庫」というシリーズから1986年に発行されています(ちなみにこのとき店主はまだ生まれてもおりません…)。この「X文庫」というシリーズ、Wikipediaによると初期の頃は漫画やアニメ、映画ノベライズ、ゲームブックにタレント本などをメインに発刊していたレーベルだったとのことです。

収録されたラインナップを見てみると『キングコング』、『ターミネーター』、『ゴースト・バスターズ』、『グレムリン』などなど、かなりイカした作品が収録されています(ちなみに我らがロメロ御大の『死霊のえじき』もあります!)。

その後「X文庫」は少女小説の「ティーンズハート」→「ホワイトハート」と新しいレーベルを創刊します。それにともなって上述した初期X文庫は絶版になってしまいました(現在はホワイトハートのみ発売が継続)。当初はマニアックなラインナップを出していたレーベルが今では少女小説専門になっているとは、なかなか面白い歴史がありますね。

「初期X文庫」は平成生まれの店主にとって今では考えられないような、なんとも怪しくて香ばしい魅力的なレーベルに映ってとても好きです。機会があればこれから蒐集していきたいアイテムですね。

小説版オリジナル!怒涛の小ネタ20連発!(前編)

それではさっそく、小説版『映画小説バタリアン』と映画版『バタリアン』の比較をしていこうと思います。これから挙げる内容のほとんどが細かくて正直ドーデモいいものばかりですが、そういうのが好きなものでして…(笑) それではどうぞ!

※店主の取りこぼしや記載ミスがありましたらコメントにてご指摘いただけると幸いです。

1.サンシャインという登場人物

映画版との一番の大きな違いが「サンシャイン」という人物でしょう。

小説内で直接登場はしないのですが、フレディの仲間たちにはもう一人「サンシャイン」という友人がいることになっています。

ガールフレンドのティナと見つけた、友達のサンシャインの姿が目に焼きついてはなれない。サンシャインは、裸のままバスルームにたおれ、ふくれあがり、青白くなり、腐臭を発していた。その腕には、壊れた注射器の針が刺さったままになっていた。

『映画小説バタリアン』9頁

そう、サンシャインはすでに死んでいるのです。
そしてこのサンシャインの死を目の当たりにしたのがフレディとティナだったのです。二人はその日から更生の道を歩むようになります。

そんなサンシャインの姿を見たことで、フレディがいっぺんにまっとうな人間に生まれかわったわけではなかったが、それが心変わりの第一歩になったことはたしかだった。
なんとかちゃんとした人間になろうと、彼は死にものぐるいの努力をした。だが、時として、自分自身に対する疑いの気持ちが彼をぐらつかせた。ティナが応援してくれなかったら、フレディに更生のチャンスはなかっただろう。

『映画小説バタリアン』9頁

映画では終始コメディ要素が全面に押し出されておりますが、小説版だとこのようなシリアスな友人の死が彼ら二人をまっとうな道に導いてくれたという導入が描かれております。

2.スイサイド一味の名前

劇中でのパンク・キッズたちの名前はそれぞれ
スイサイド、トラッシュ、スパイダー、ケイシー、チャック、スカッズ
ですが小説版では

トラッシュ→レッグズ
スパイダー→ミート

とマイナーチェンジがなされています。

ちなみに主要登場人物のフルネームは
フレディ・トラヴィス
ティナ・ヴィタリ
フランク・ネロ
バート・ウィルソン
アーニー・カルテンブルナー

となっております。

3.フレディのTシャツ

映画でフレディが着ているカーキ色のTシャツ。
「DOMO-ARIGATO」や「救急を送信」の文字の入ったあの最高のTシャツです。


映画ではとても印象的なこのTシャツですが、小説版ではなんと…!

うんこのイラストと“やったぜ!”という文字の入った黄色のTシャツ

『映画小説バタリアン』11頁

になっています(笑)
フレディの攻めたファッションセンスが良くわかります(ちなみに右耳には金のイヤリングもしています)。

4.ハーゲンタフの力の強さ

ハーゲンタフの頭をつるはしのようなもの(小説版での表記は鳶口となっています)で突き刺すシーンにて、その力の強さが書かれていました。

叫び声をあげているゾンビが、かっと二人をにらんだ。黄疸にかかったような黄色い皮膚に、かわいた眼球の、ぞっとするような顔。[中略]鳶口のとがった先端がゾンビの額を割ったが、死ななかった。かわりに、そいつはくるったような叫び声をあげ、普通の人間の四倍ぐらいの力で、足や手をばたつかせてのたうちまわった。

『映画小説バタリアン』114~115頁

“四倍ぐらい”ってのが絶妙で面白いです。

5.アーニーの年齢

カルテンブルナー葬儀社を営むアーニー・カルテンブルナー。
映画ではドン・カルファという方が演じています。このドン・カルファ氏、1939年生まれということなのでバタリアンを演じていたときは大体46歳ということになりますが…。

アーニー・カルテンブルナーは、薄茶色の針金のような髪に、骨ばった顔と分厚い唇をした、三十六歳の男だった。

『映画小説バタリアン』123頁

小説版ではアーニーの年齢は36歳ということがはっきりと記載されていました!映画版では何歳の設定で演じられていたのでしょうか?

しかしこの年齢で葬儀社を経営するとは。会社に自らの名前を冠してるところを鑑みるにおそらく社長兼技術者なのでしょうか? 実家が葬儀社で親から引き継いだ? などなど妄想がたくましくなります。また、髪色の違いなど容姿の描写が異なる点も面白いです。

6.演技派ゾンビのタールマン!

ティナがユニーダ医療器具会社の倉庫で待っているとき、タールマンが助けを呼んで、なんとティナをおびき寄せます!

「たすけてくれ。たすけて!」
ティナはぎょっとして後ずさりした。扉をぴしゃりと閉めて逃げ出そうとした。
だが、その声は、あまりにも悲しげで必死だった。助けを求めてる人を見すてるなんて、あたしにはできない。きっと、フレディの同僚が、誰もいない間に事故にあったのね。
また叫び声がした。
「たすけて、たすけて!」
声は、だんだん弱く、かすれ、絶望的になっていく。[中略]
「どこにいるの?」
ティナが叫んだ。
「あたし、ここよ。あなた、どこ?」[中略]
「この下だ」
弱々しい声がうめいた。

『映画小説バタリアン』136~137頁

その後例の3段目の階段に注意しながら(笑)、ティナが倉庫の地下室に降りていくと、待ち受けていたタールマンが「脳みそ、脳みそをくれー。」となります。

映画でも道具を使うあたりかなり賢いタールマンでしたが、小説版だと弱々しい声音をだして演技までしちゃうのがビックリでした。やはりタールマンは可愛いですね。

7.謎のゾンビ「タールマンビ」!?

小説中に一度だけ「タールマン」なるゾンビがでてきます。

ティナは、一同が凍りついた瞬間、物置から一目散に走り出た。タールマンビがつかまえようとしたとき、彼女はもういなかあった。

『映画小説バタリアン』165頁

新種のゾンビ「タールマンビ」!?

ではなく、ただの誤植です(笑)
本書の二刷が存在していたらはたしてここは訂正されているのか。気になります。

8.要請をうけたとき救急隊員たちは

カルテンブルナー葬儀社へ向かうまで、救急隊員たちは詰所でトランプをしています。

カルテンブルナー葬儀社へ急行している救急隊員たちは、それまで、詰所でトランプをやっていた。

『映画小説バタリアン』184頁

映画には描かれていないシーンですね。
ちなみにふたりの名前はドン・バーチョークとスタン・フェルトスタインといい、アーニーたちから電話を受け彼らのもとへ向かうのがこの日9回目の出動だったようで辟易としています(笑)

9.救急隊員が襲われるシーン

二人の救急隊員がカルテンブルナー葬儀社を出てバタリアンに襲われるシーンですが、小説版では結構詳細に描写がなされています。

長くなるので引用はしませんが、映画にはないセリフなどを交えつつ、二人の必死の抵抗が描かれており、とても新鮮で面白いです。

10.ティナはゾンビ化したフレディにサンシャインを重ねる

ゾンビ化が進行して息も絶え絶えなフレディにティナが再会したするシーン。

「ひどい顔、フレディ、こんなのはじめてよ。そっくりなの……。あの……あの……。」
ティナは唇をかみ、口ごもってしまった。
「サンシャインそっくりなんだろ。」
ティナのいいよどんだ言葉を沈んだ声でつぶやくフレディは、なんとも痛々しかった。

『映画小説バタリアン』211頁

このシーンもサンシャインの死に直面した二人だけにわかる特別な描写ですね。

おわりに

いかがだったでしょうか?
前編のvol.1はここまでとなります。
読んでいただきありがとうございました。

こうして読んでみると、小説版には映画にはない特有の表現がたくさんあってとても面白いですよね。

続きのvol.2の記事にもこのようなマニアックなポイントをたくさん書いておりますので、ぜひお読みください!

それではまた!
ふししゃでした〜

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