小説版『バタリアン』怒涛の小ネタ20連発!【vol.2】

小説版オリジナル!怒涛の小ネタ20連発!(後編)

vol.1の記事からの続きです〜。
今回も小説版にしかないマニアックな内容に触れてます。

前編をまだお読みでない方はぜひコチラの記事もあわせてお読みください。

11.電話線を切ったのは?

救急隊員を増援するよう要請する賢いバタリアンたちですが、小説の中では「でっぷりしたゾンビ」が大活躍を見せます。電話線を切るシーンが描かれ、そのゾンビの描写がなんともいい感じなのです。

常夜灯がまだともっているのを見て、でっぷりしたゾンビの頭に名案が浮かんだ。通りを見ると電柱があり、そこから葬儀社まで電話線が延びている。でっぷりしたゾンビは、送電線が建物の近くで垂れ下がっているあたりまで、よたよたと歩いていった。猛烈な火花が飛び散るのもかまわず電線を引きちぎる。葬儀社の常夜灯も屋内の電灯も、すべて消えたのをたしかめ、でっぷりしたゾンビは満足げだった。

『映画小説バタリアン』227頁

満足げ、という描写がなんとも可愛らしいです(笑)

12.アーニーという男

劇中でもアーニーはリーダーシップをみせますが、小説版ではそれが特に強く描かれています。小説ならではの文章による深い心理描写があるので、「そんなことを考えていたのか!」とハッとさせられます。

アーニーだけについていえば、このクレージーな騒動には、もう一つ皮肉な面があった。生まれてはじめて勇気のあるところを見せて、リーダーにおさまったことである。
アーニーは、自分が悔やみを並べる葬儀屋の仕事以外でも、人の上に立てる男のように思えてきた。[中略]
なにかいままでになかったもの、つまり自信というやつが、体じゅうからあふれだしている感じだった。高校出で、女はからしき苦手なつまらない中年男が、それも腰の低い葬儀屋だ。そのアーニー・カルテンブルナーが、突然、姿を変え、一目も二目も置かれる人物になったのだ。

『映画小説バタリアン』239頁

小説では終始高卒のダメ人間として描かれており、特に女性への苦手意識が強調されています。映画ではそんなキャラクターとしては描かれていないように思いますが、これも小説ならではの面白いポイントですね。

13.オバンバ、燃ゆ

我らがアイドル、オバンバ。
なんと小説では燃やされます!

映画同様、手術台の上に拘束されるオバンバの話に興味深く耳を傾けるアーニーでしたが、ミートとバートはオバンバをすぐに燃やそうと提案します。

アーニーは実はこのときすでに、最初のバタリアン(映画版でいうところのハーゲンタフ)を焼いたことによって発生した煙が雨のために液化して墓地に降り注ぎ、それによって死体を生き返らせたことに気づいていました。そんなだからいくら燃やしたところで結局ゾンビの数を増やすことになると彼らに忠告しますが、ミートとバートに説得されて結局火葬炉を使用することになります。

ミートが毒づいた。
「あのいまいましいゾンビめ、焼いている俺たちをばかにして笑いやがった! しゃあしゃあとしてやがるんだ。あのゾンビ、姿を変えて俺たちのところにかならずもどってくる気なんだぜ! けど、俺はもう平ちゃらよ。とにかく、いまんところはあのゾンビはいなくなったんだからな。」

『映画小説バタリアン』266頁

直接火葬炉で燃やされるシーンが描かれてはいないのですが、ミートのセリフから燃やされる直前までオバンバはあの調子で人間を嘲笑っていたようです。なんだかその情景が容易に想像できますね。

14.アーニーが室内で発砲

カルテンブルナー葬儀社に駆けつけた警察官たちですが、映画同様彼らもバタリアンたちに待ち伏せされてあっというまに食われてしまいます。そのシーンで警官たちが油断してなかなか銃を抜かないのに痺れを切らしたアーニーが機転をきかせてある行動をとります。

警官たちは、騒々しい物音に気づきはしたが、まだリボルバーを抜かない。そのまま二人は葬儀社のポーチに向かって歩き出した。間髪を入れず、幽霊のような人影がいくつか、どしゃぶりの夜の暗闇からじりじりと警官たちに近づいた。
もうどうしようもない。アーニーはルガーをベルトから抜いて、続けざまに二発、撃った。弾は二発とも天井にあたり、しっくいが雨のように降ってきた。
警察官二人は、歩道めがけて駆けだし、片側に何本かある松の陰に身を隠し、リボルバーを抜いた。

『映画小説バタリアン』276~277頁

機転を効かせたアーニーの判断でした。
小説版ではどんどん男らしくなっていくのが面白いです。

15.屋根裏にはおりたたみ式の板梯子がついている

ラストシーンでアーニーとティナが隠れるあの屋根裏部屋ですが、映画では脚立で登りますよね。しかし小説版ではおりたたみ式の板梯子で登れるようになっています。

懐中電灯で天井にはめこまれたはねあげ戸を照らし、手を伸ばして引き綱を引く。はねあげ戸が開き、屋根裏部屋と専用のおりたたみ式の板梯子が見えた。

『映画小説バタリアン』282頁

ティ〜ナ〜。

16.フレディの最後の良心

映画ではティナの献身的な介抱も虚しく、フレディはバタリアンと化してティナを襲い始めます。
このとき映画だと、フランクは一人で走り出して教会を抜けて自ら火葬炉に飛び込みますが(指輪をレバーにかける名シーン)小説版ではそうではありません。

まずフレディより先にバタリアンと化したフランクがティナに襲いかかります。そしてまだ人間の理性が少しだけ残っていたフレディがそれを阻止するのです。なかなかに感動的な展開です。

「フ、フレディ、な、なにをいうの?」
ティナはおびえきって、泣くじゃくった」
「逃げてくれ。」
フレディのあらい息づかいが聞こえた。
「腹がすいて……もう……我慢できなくなりそうだ。なあ……ここを出て……鍵をかけてくれ……。僕とフランクに……捕まらないように……。」
しかし、口から泡を吹いていたフランクがもう起きあがり、中腰のままティナに近づこうとしていた。
「脳みそをくれ! 脳みそをくれ……!」
フランクが、かすれた気味の悪い声でつぶやくのが聞こえた。[中略]
フレディはほんのわずかのこっていた人間らしい気持ちをかきたてて、ガールフレンドを餌食にされまいとフランクを押さえるのに必死だった。

『映画小説バタリアン』290~291頁

良いシーンですね。
ちなみにバタリアン化したフランクにはその後「新米ゾンビ」という呼称がなされます(笑)

17.フレディの目が見えなくなるのは硫酸ではなく…

映画ではアーニーによって硫酸をかけられてフレディの目が見えなくなりますが、上述したようにフレディはティナを守ろうとするのでアーニーによって硫酸をかけられる必然性がありません。では、どうなるかというと……。

アーニーが礼拝堂のドアを閉めるまえに、フランクがものすごい体重と腕力にものをいわせて、馬乗りになり、枝つき燭台の釘を二本、フレディの目につきさすのが見えた。
非力な若いゾンビが苦痛に悲鳴をあげ、その声は鍵をかけに礼拝堂のドアを通して廊下に響きわたった。
「ギャーーーーー!目が見えない、目が見えない……。」
フレディのかすれ声が、礼拝堂の中からくぐもったように聞こえていた。

『映画小説バタリアン』291~292頁

フランクとフレディは職場でも上司と部下の関係でしたが、フランクの方が少しはやくゾンビ化したのでフレディを「非力な若いゾンビ」と書いているのが面白いですね。

18.チャックとケイシー

チャックとケイシーは、倉庫の事務所の床に広げた二枚の家具用マットの間に潜りこみ、抱きあって寝ていた。セックスを楽しんだばかりの二人は、自分たちの作った巣だけをこの世のすべてと思い、外の危険など忘れてしまっていた。

『映画小説バタリアン』302頁

さんざんケイシーにつけ回っていたチャックですが、小説版ではこの二人寝ています。
映画版に比べてかなり性描写が多めなのも特徴ですね。
前編には書いてませんが、序盤の墓場での乱痴気パーティーにおいてもそういった描写がなされます。

19.タールマン巻き一丁上がり!?

映画だと意外にも「そんなアッサリ!?」と笑っちゃうくらい簡単にやっつけらるタールマンですが、小説版のヤラれ方は傑作なのです! ケイシーがおとりとなって駆け出し、それを追いかけるタールマンの隙をついてやっつけるという作戦をとります。

ケイシーは倉庫に並んだスチールの高い棚の間へ駆けこみ、床のろうそくを目印に作戦どおりの通路を走りぬけた。最後のろうそくのところまで来ると、ケイシーは足をとめて後ろを向いた。見ると、追ってきたタールマンはよだれを垂らし、さかんに臭い息をふりまいている。
ケイシーはしゃがみこみ、もう足がすくんで一歩も歩けないようなふりをした。いや、演技をするまでもなく、実際にケイシーは歩けなかったといってよかった。タールマンが襲いかかってきたところで、ケイシーはすかさず後ろへ飛びのいた。
間髪を入れず、家具マットとロープの即整ネットが落ちてきて、タールマンの上にかぶさった。続いてバートとチャックが棚の上から飛び降りた。二人は大格闘のすえ、タールマンを押さえ、床の上を転がして、ネットでくるんでしまった。

『映画小説バタリアン』310頁

やばくないですか? あのタールマンをくるんじゃうんですよ(笑)? ネットにくるまって縛られ身動きとれないタールマンのフィギュア欲しいなぁ。

20.核爆弾の発射は演習だと思っていた?

バタリアンといえば衝撃的なラストシーンが印象的ですよね。
バタリアンの大発生を核攻撃で終わらせてめでたしめでたし(笑)にする、あのおなじみのラストシーンです。小説版ではあの核攻撃に至るまでの描写がなされていてそれがまた面白いのです。

厳重警戒体勢の電話から、まだ会ったことのない将校が、軍曹に“撃て”と命令した。
軍曹はただの安全な演習だと信じこんでいたので、平然と巨大な砲弾を打ち出す姿をながめ、滑車が揺れるほどの反動を快く思っていた。

『映画小説バタリアン』336頁

えええーーーーまさか演習だと思っていたとは…(笑)
なんともバタリアンらしいおかしみがあって面白いですね。

ちなみにですが長年ドラム缶を探す任務についていたグラバー大佐ですが、その作戦名は「ドラマー・ボーイ作戦」というらしいです。

これで、ドラマー・ボーイ作戦も終わるかと思うと、大佐は胸が高鳴るのを覚えた。

『映画小説バタリアン』326頁

また、この作戦の最高司令官の名前は「ミルトン・ダンスタン将軍」というらしいです。

おわりに

いかがだったでしょうか?
映画版とは異なる点が多くあり、ファンとしては読んでいて「おっ!」となる箇所が多く非常に楽しめました。

ついつい好きが昂じて前後編あわせてけっこうなボリュームになってしまいましたが、バタリアン好きな人には「へぇ〜」と思える興味深いポイントも多くあったのではないでしょうか? 店主的には「タールマン巻き」が一番のツボでしたね(笑)。

それでは、今回はここまでです。
お読みいただきありがとうございました。
次回のゾンビ記事でお会いしましょう。

ふししゃでした〜

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