『YUMMY/ヤミー』
※本記事はネタバレを含みます※
“ベルギー初のパンデミック・ゾンビホラー”との謳い文句に「あれ?『ゾンビーズ・フロム・セクター9』は?」と思いましたがあちらが2020年の映画でこちらは2019年なんですね。
![](http://zombiesblog.com/wp-content/uploads/2023/06/6e67b6cd9d7f9a50861c785ddd486e66.png-720x1024.jpeg)
う〜んナイスジャケット!
ベルギーゾンビ界の先輩後輩の関係でいうとこんな感じになります。
![ZFS9くん<br>(3歳:当時)](http://zombiesblog.com/wp-content/uploads/2023/05/ゾンビーズフロムセクター9.png-1-150x150.jpeg)
(3歳:当時)
ヤミー先輩ちわっす!
![ヤミーさん<br>(4歳:当時)](http://zombiesblog.com/wp-content/uploads/2023/05/ヤミー-150x150.jpg)
(4歳:当時)
おう
作風や画質から勝手にこの作品の方が先に公開されてるんだろうなぁ、と先入観で思い込んでいると「え!こっちの作品の方がこんなに先輩なの!?」となることが結構あったりしますよね。
あらすじ
主人公アリソンは、自分の大きな胸にコンプレックスがあり、乳房縮小手術を受けるべく、ちょっとマヌケな恋人のミカエルと、美容整形に異様な執着をみせるアリソンの母親を乗せ、東欧で随一の美容整形技術を有する病院へと向かって車を走らせていた。
その道中、ミカエルは一瞬目を逸らした隙に何かをひき殺してしまう。
車を降りて確認してみると、そこには瀕死の状態で体をヒクヒク言わせている「ナゾの生物」が。
普通なら即死でもおかしくないその「ナゾの生物」はどうやらしぶとくまだ生きているようで、慈悲をかけて楽にしてやろうと木の枝を振りかぶるが…後ろからきた車が一瞬で轢き殺していってソレの返り血を浴びたミカエルは盛大に嘔吐するのだった。
ゾンビ映画にはあるあるの冒頭です。
「なぜか死なない生き物」に遭遇してこれから始まるゾンビパニックを予感させる冒頭は視聴者をニヤニヤさせてくれるので良いのですが、問題はなぜマヌケで冴えないミカエルが可愛くておっぱいの大きいアリソンを射止めることができたのかという点、ただそれだけに収斂されていきます(怒)。
© 2019 Yummy , LLC. All Rights Reserved
可愛いくておっぱいも大きいアリソンに対して、
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ちょっと禿げてて血を見ると速攻でゲロを吐いてしまう頼りないミカエル。
ふ〜ん。あっそう。へぇ〜。
さて、気を取り直して。
やがて病院に到着した一行。そこには様々な施術を受けるためにたくさんの患者が入院していた。脂肪吸引、刺青除去手術、アソコ増大手術などなど…。そして患者たちだけでなく、ここにいる医師も一人残らずやたらクセが強い面々なのであった。
こうして“何かが起きないわけがない面々”が一堂に会する病院で、院長のとある計画のせいでゾンビパンデミックが発生。
病院という特殊な閉塞的空間と登場人物のキャラクターをとても上手に用いて描いており、ゴアシーンも中々に気合の入ったものが多く、最後まで飽きない構成の良作ゾンビ映画に仕上がっています。
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上半身だけ這いずりゾンビに追われるシーンはとても秀逸!
※あとミカエルがやたらゲロ吐くシーンが多いのですがそれがヤケにリアルでこたえます…。ゴアシーンよりもこういうシンプルな人間の生理現象をまざまざと見せつけられる方がよりグロテスクな感じがしてしまうという、これもゾンビ映画あるあるな気がします笑
ヤミーのここがスゴイ
突然ですがゾンビ映画の魅力として、「リアルさ」というものがあると店主は思っています。
それはゾンビを含む登場人物たちをいかに写実的に描くかということではなくて、「ゾンビパンデミックになったら日常はこうやって形を変えていくよな」というのを説得力をもって描かれているシーンのことを言います。
いくらゴアシーンや血糊などの演出面・美術面がリアルであっても、それらをとりまく環境が現実から浮いていては面白くないですし迫ってくる迫力は生まれ得ません。
例えば有名な作品でいうと、映画『アイアムヒーロー』で、ゾンビパンデミックが発生して街中が大混乱に陥る中、主人公がタクシーについたテレビモニターを確認して「テレ東がアニメを放送しているからまだ大丈夫」と安心した矢先に画面が緊急放送に切り替わる、というシーンがあります。
これなんかはとても「リアル」さを持っていて面白いですよね。そういった意味でのリアルさがヤミーにも何点かあったので紹介しようと思います。
①この手があった!?
ゾンビ映画にかなりの確率で登場するシーンとして“噛まれた部位を切断する”というのがあると思います。ウィルスが回る前に素早く感染部位を切り落として、その後も生存するキャラクターは多いです。
ヤミーにもそのシーンがあるのですが、これが中々斬新でした。その方法はというと…
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シュレッダー!(痛ってぇ!)
シュレッダーで硬い骨まで削り切れるの?と少し疑問には思いましたが、本人も「この手があった!」と自らの大発見に雄叫びをあげています笑
まぁ、この後すぐ彼のこの手はなくなるんですが(お後がよろしいようで)。
②ゾンビならでは
物語終盤、追い詰められたミカエルが地下道でゾンビに襲われ絶体絶命のピンチを迎えます。武器もないので脳髄に一撃喰らわせることもできません。そんな中ミカエルがとった行動は、
ゾンビの肋骨をもぎ取ってナイフ代わりにする
というナイスアイデア!
敵対するゾンビの腹部が傷ついて内蔵があらわになっているのに気がついたミカエルは、取っ組み合いの末ゾンビの腹から肋骨をバリっともぎ取り、それをあたかも鋭利なナイフのように使って見事に敵を倒します。
来るべきゾンビパンデミックに備え、我々もぜひとも覚えておきたい対処法ですね。
③SDGsなゾンビ活用
地下道からの脱出を試みるミカエル。
しかしハシゴも機能しておらず、仲間も下に降りていないため地上に上がることができません。そんな中ミカエルがとった行動が、
腸を引き摺り出して脱出用のロープ代わりにする
という作戦!すごい!
序盤のヘッポコ具合が嘘のような逞しさを見せるミカエル。「捨てるところがない」と言われるアンコウのようにゾンビを隅々まで有効に活用するミカエル。アリソンが惚れた理由もわかって気がします(?)。
ヤミーの本当の魅力
この映画、観賞後ちょっと不思議な印象が残ります。
それは物語として謎が多く残るという意味ではなくて、全編を通してコミカルとシリアスの配合具合が絶妙なためなんだかとても不思議な感じを与えるんですよね。
要所要所で笑わせにくる箇所もあるんですが、しっかりシリアスな場面展開も続いていて、今までにない雰囲気のゾンビ映画に仕上がっていると感じました。
コミカルとシリアス、どちらかに全振りしたゾンビ映画は数多くあれど、このヤミーのようにどちらともをこの上なくバランスよく混ぜ、そのうえで違和感なく両方の空気感を損なうことなく保ちつづけて一本の作品に落とし込んでいる点でとても稀有なゾンビ映画になっています。
コメディゾンビ映画といえばそうも言えるのですがなんだかしっくりこず、かと言って王道のパニックゾンビ映画と言えばそうもそれもなんかなぁ、といった具合の名状し難い立ち位置にいる珍しい作風に感じました。
この口ではうまく説明ができないある種の曖昧さこそ、本作の最も大きな魅力なのだと思います。そういった意味ではけっこう大人なゾンビ映画と言えるかもしれません。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回はベルギーゾンビ映画『YUMMY/ヤミー』をご紹介しました。
シンプルに良質なゾンビ映画として楽しめる一方で、鑑賞後の不思議な雰囲気も味わえる魅力的な作品ですのでオススメです。
ちなみにですが「ベルギー ゾンビ」で調べたところ『トランジット17 第17区』という2018年作成のベルギー産のゾンビ映画があることを知りました。
![17区氏<br>(5歳:当時)](http://zombiesblog.com/wp-content/uploads/2023/05/トランジット17 第17区.jpg-150x150.webp)
(5歳:当時)
俺もいるぜ
困ったことにまったく面白そうではありませんがいつか観てみようと思います。
それでは!
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